薬物乱用頭痛とは

本来、ストレッチや体操、整体などで改善が期待される片頭痛や緊張型頭痛を、仕事や家事に支障をきたさないよう予防的に頭痛薬を服用する習慣により、かえって頭痛の頻度が増してしまう状態を「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」と呼びます。
激しい頭痛を経験すると、頭痛発作への不安や恐怖から予防的に頭痛薬を服用する傾向が強まります。同時に、服用回数や量も次第に増加していきます。そうした悪循環の結果、脳が痛みに対して過敏になり、頭痛の頻度が増すだけでなく、薬の効果も低下していくという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
国際頭痛分類では二次性頭痛に分類されていますが、実際は一次性頭痛、特に片頭痛と合併して現れることが多い頭痛の種類というのが特徴とされています。
疑わしい症状・習慣
悪循環

激しい頭痛を経験すると、頭痛発作への不安や恐怖から、つい予防的に鎮痛薬を飲み過ぎてしまう傾向があります。次第に服用回数や薬の量が増加していきます。
こうした過程を経て、脳の痛みに対する感受性が高まり、頭痛が慢性化するだけでなく、薬剤への耐性も生じてしまうという悪循環に陥ります。
治療方法
根本的な治療のためには原因薬物の服用中止が必須です。ただし、単なる服薬中断では不十分で、中止後に生じる反跳性頭痛(離脱頭痛)に対する適切な管理が求められます。この離脱症状では激しい頭痛に加え、吐き気や嘔吐などの随伴症状が現れる場合があります。
専門医療機関では予防薬や代替治療薬を用いた段階的離脱療法を実施します。離脱期間の1-2週間は症状が悪化しやすい時期ですが、体内から薬物が代謝されると、連日続いていた頭痛が軽減し、基礎疾患である片頭痛や緊張型頭痛の本来の状態に戻ります。この段階に至って初めて、整体療法や理学療法、生活習慣改善など根本的な頭痛管理が可能となるのです。
未然に防ぐためには
薬物乱用頭痛は再発リスクの高い病態であるため、日頃から鎮痛薬に依存しない生活習慣の確立が重要です。再発防止のためには以下のポイントを遵守してください。
- 予防のための5か条
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- 鎮痛薬の服用回数は月10日未満に厳格に管理
- 市販薬の予防的服用を徹底的に回避
- 単一成分製剤を選択(配合薬は避ける)
- カフェイン含有製品(無水カフェイン/カフェイン水和物)に注意
- 併用薬がある場合は必ず医師の管理下で服用
国際頭痛分類
- 薬物乱用頭痛診断基準
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- 頭痛は1ヵ月に15日以上存在し、3および4を満たす
- 「急性の物質使用または曝露による頭痛(このページ下部に記載)」に示す以外の薬物を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
- 頭痛は薬物乱用のある間に出現もしくは著明に悪化する
- 乱用薬物の使用中止後、2ヵ月以内に頭痛が消失、または以前のパターンに戻る
- サブタイプの診断基準
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- 日数については下記のように規定されている。
- エルゴタミン乱用頭痛: 10日以上
- トリプタン乱用頭痛: 10日以上 (剤形は問わない)
- 鎮痛薬乱用頭痛: 15日以上(単一の鎮痛薬)
- 複合薬物乱用頭痛: 10日以上
市販の頭痛薬の大部分は複数の成分が配合されているので複合薬物に分類される。 - 急性期治療薬の組み合わせによる薬物乱用頭痛: 15日以上
- 日数については下記のように規定されている。