頭部外傷による頭痛

頭部外傷とは頭部に物理的衝撃が加わることで生じる組織損傷の総称です。受傷直後から外傷性脳損傷を併発するケースも少なくありません。受傷後速やかに医療機関を受診し、CT検査やMRI検査による脳損傷の有無を確認することが最優先です。
脳画像検査で器質的損傷が認められない場合でも、衝撃エネルギーの伝達による「骨格構造の歪み」や「筋筋膜の過緊張」が生じている状態です。当院の臨床データでは、受傷後早期に筋骨格系の調整を実施した症例では、3-5年後のむち打ち関連障害(重度の肩こり・慢性頭痛など)の発症率が低減することが確認されています。
損傷の種類
- 直撃損傷
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頭部への打撃を受けた際、外力が加わった部位の頭蓋骨はたわみ変形を起こし、これが脳実質を圧迫することで損傷が生じます。さらに、頭蓋骨と脳組織の弾性率の差異により、骨内面が脳実質に物理的衝撃を直接与えるメカニズムが働きます。この二つの作用機序
が衝撃点直下に脳挫傷を引き起こす状態を、医学的に直撃損傷(coup injury)と定義します。
- 反衝損傷
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外力が頭部に加わった際、衝撃を受けた部位の正反対側に損傷が生じる現象を対側損傷(contrecoup injury)と呼びます。この損傷機序は主に二つの物理的要因によって説明されます
特に加速度損傷において顕著に現れるこの現象は、法医学や外傷診療において重要な鑑別ポイントとなります。
- 剪断損傷
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頭蓋内は非均質な解剖構造を呈しており、頭蓋骨・硬膜・大脳鎌・脳室系・灰白質・白質など、各組織が異なる物理的特性(弾性率・粘性率・密度)を有しています。この組織間の粘弾性差が衝撃伝播時に剪断応力(ずれ応力)を発生させ、特に灰白質と白質の境界領域や脳梁周辺で組織の層間剥離を引き起こします。
このメカニズムで生じる特徴的な脳損傷を剪断損傷(Shear Injury)と称し、びまん性軸索損傷の主要な発生機序として知られています。